書籍『世紀の相場師ジェシー・リバモア』

『世紀の相場師ジェシー・リバモア』

著者:リチャード・スミッテン

出版社:角川書店

初版:2001年6月1日

【紹介】

幾度の成功と破産を経ながらも1929年の世界恐慌を予測し、暴落の最中に一人勝ちを収めた伝説の相場師。この世の絶頂と絶望を生きた生涯は世紀を超えて語り草になっている。当時のウォール街を知れるドキュメンタリー小説でありつつ、彼の相場観や投資法も学ぶことができる一冊。

 

【5箇所抜粋】

①P.10

まず第一に、人の心はいつの世も変わらず、変わるのは人々の顔ぶれであり、財布の中身であり、カモにされる連中であり、株価を操ろうとする連中であり、戦争であり、天災であり、技術であるということだ。しかしそうした要素がいかに変化しようと、株式市場は変わらない。なぜか。人の心が変わらず、人の心こそが市場を動かすとすれば、市場もまたいつの世も変わらないのだ。市場の動きに理屈はない。経済学で動くわけでもないし、理論に従って動くものでもない。市場を動かすのは人間の感情にほかならず、なぜかといえば、人々はなし得るほとんどすべてのことを市場に持ち込むからだ。

第二に、物質的に成功や高い地位、あるいは野望を実現したからといって、必ずしも幸福な人生を手に入れたことにはならない、ということである。世俗的豊かさと精神的豊かさは比例しない。

第三に、人間が何事かを成し遂げるためには、強固な意志が必要だということだ。知性ではなく、意志が重要なのだ。才能だけでも十分ではないし、運だけでも心もとない。才能を持ち合わせた人間が、勤勉さと、意志の力と、信じがたいほどの忍耐力を発揮したときにはじめて、不可能が可能になる。

最後に、人類の偉大なる発明はつねに、集団によってではなく、たったひとりの個人によって成し遂げられてきたということだ。莫大な富を築くのも、画期的な技術革新も、政治の激変も、医学の発掘も、すべてはただ一人の人間に帰せられる。そこに至る道のりがどんなに険しくても、近道はないし、楽な道もない。ことに、株式市場を相手に闘うとなれば、その過程は困難きわまりない。

 

②P.55

第一の結論は、彼が勝つのはつねに「勝つ条件が都合よくすべてそろっている場合に限られる」というものだった。好条件がそろうのを辛抱強く待ち、ここぞというときに打って出た場合、負けることはなかった。ここから第二の結論が導き出されてくる。「休みなく相場を相手に勝負し、勝ち続けるのは不可能であり、またそうすべきではない」というものだった。すべてを手じまいして、時に市場を離れ、現金を枕に次の機会を待つ姿勢がなければならない、ということである。

 

③P.81

彼は二度にわたってすべてを失った。しかしすべてを失うということは、株の世界で生きる者にとって死活的に重要な学習機会なのだとリバモアは思い定めていた。相場師は失わければならない――。そこで初めて何をすべきでないか学び取ることができる。それでも「もう一度やれ」という内部の声が聞こえたら、もの分かりの悪いやつ、と言うしかないし、再度まるはだかとなるであろう。

 

④P.85

リバモアはまた、やすやすと勝負に負けるトレーダーやこの世界でカモにされやすい新参者についても考えた。そして、こうした類いの連中は、三つのタイプに分類できると結論づけた。

(1)第一は、無知蒙昧の道楽者。ヘタの横好きというタイプで、自分の無知だという認識はもっている。この世界で保たれる命は、三ヵ月から十ヶ月程度。

(2)第二はリバモアが準道楽者と呼ぶタイプで、初心者レベルを卒業し、次の段階に入ってはいるものの、自分と似たり寄ったりの「愚か者」から情報を仕入れている連中である。こうした連中はまた、相場の格言、大物相場師の名言などを盛んに口にする。このレベルの人間はそれほど頭が悪いわけではないから、三年半程度は生き永らえることができる。

(3)最後は「愚か者」の中でも一番ましな連中で、割安株をねらって仕込み、反騰を待つタイプである。底値で株を仕入れるというやり方は悪くないが、二度と反騰しない株、さらに値を下げていく株をつかむと、それで終わりである。

 

⑤P.326

厳しい自己管理、明確な戦略策定、分かりやすい達成目標を欠いた相場活動は、早晩行き詰まらずを得ない。なぜなら市場の荒波にもまれ、方向感覚を失った投資家は、感情という落とし穴に簡単にはまり込むし、次から次と無意味に銘柄を買い替えたり、手放す時期を見失って損失額を雪だるまのように膨らませたりしてしまう。だれの中にもある欲望、不安、いらだち、希望などの精神的な要素も、自らの主導権をねらって暴れ、主人を振り回すことになろう。そんなことで二度、三度と手痛い敗北をこうむると、たいていの相場師は恐れをなし、しっぽを巻き、すっかり打ちのめされて舞台を去っていく。つまり、市場が潜在的に差し出してくれている富の前を、肩を落として素通りしてしまうのだ。

 

【感想】

私がリバモアを知ったのは書籍『マーケットの魔術師』の中で伝説の人物として語られているのを読んだときでした。当時の私は相場歴1年で、既に2度も破産していました。その2度ともが1千万円を目前に敗退していたので、リバモアという人物が大勝と破産を繰り返したという話に親近感を感じたのを憶えています。

私にとってリバモアは織田信長のような人です。彼は類稀な才覚を持ちながら天下を取り損ねました。それはつまり相場で生き残れる人というのは徳川家康のような人だと言えるかもしれません。それでも私が織田信長を好きであるように、数多くいる相場師たちの中でも特にリバモアが好きなのは、彼の生涯には心躍るものがあるからです。

この書籍は、まさにリバモアの生涯が描かれています。幼少の彼が母親から貰ったお金を握り締めて家出をし、ボストンに着く。そして最初に見つけたアルバイト先が非合法の証券取引所(パケット・ショップ)で、彼はチョークボーイとして刻一刻と変動する株価を黒板に書いては消してまた書くという日々を送る。現代では出来ない下積みを経て、彼は立身してゆく――。

相場の歴史や1900年前半の経済状況を知りたい人にとっても素晴らしい一冊と言えます。

 

 

◇リバモアを含む大物相場師たちの投資テキスト

「巨匠に学ぶ投資プロフェッショナル講座」


にほんブログ村 株ブログ 株式投資情報へ